06. くすり指は弓の面を決めます

中指の次はくすり指です。くすり指は弓を持つ3本の指(中指、くすり指、親指)の中の1つの指で、重要な指なのですが、このくすり指には弓を持つという他に重要な仕事があります。くすり指の位置はフロッグ(黒い毛箱)のへこみの所に、へこみを感じながら触っていてください《 写真 8 》。

薬指がフロッグのへこみを感じる位置にある、チェロの弓を持つ右手

他の4本の指は、いずれも弓本体の丸みの部分に接触しているのですが、くすり指はフロッグに触っているため、ただ1本弓の縦方向の面を感じられるのです。

ボーイングの最中、この面が弦に対して大きく変化することはありません。それから《 写真 9 》を見てください。横から弓が弦と接触する写真です。

チェロの弓を弦へ当てた時の横から見た様子

写真からでもお分かりのように、弓は決して弦とピタッと向き合って接触しません。弦が斜めになっているのに対して、弓はほぼ垂直に近い形で接触します。これは重要なことです。

弓の毛が弦に対して、ピタッと全部同じ強さ(弱さ)で接触すると、まず音色がザラザラした感じになって悪くなります。そして何より特に低弦において、音の立ち上がり(発音)が悪くなります。チェロはただでさえ大きくてバイオリンの発音の良さに必死で対抗しなければならないので、音の立ち上がりには是非敏感になって欲しいのです。

《 写真 9 》の様に弦に接すると、一番端の毛に一番体重がかかり少しの重さでもしっかりと弦をくわえてくれて、敏感に音の立ち上がりを助けてくれます。そして、重さが増えれば増えるほど、一番端の毛はますます弦をくわえてくれて、ただちに発音してくれます。もちろん、指が弓と接触している部分は他の指と同様、絶対に動いてはダメですよ。

追) 前回の(中指のエッセイ)で思い出した事があります。日本を代表する女流チェリストF女史はピアノ(弱い)の部分になると中指を弓から放して演奏します。
ピアノになれば、中指で重さを伝える必要も無いし、伝えたくないからなんですね。今度テレビかコンサートでよく観察してください。

Yoshihiro Yamazaki
2001.6.30

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