先月のコラムで、音が出ないボーイングを書きましたので、ついでに音が出ないボーイング そのA(全く音が出ないわけでありませんが)を書きます。先月までの、いかに腕の重さを弓に伝え、また弦に乗るかという趣旨とはガラッと変わり、そのA≠ヘ空中散歩です。

 僕が、「オーケストラがやってきた」のテレビ番組に出ていた頃、その日の収録はあるバイオリニストの特集でした。そのバイオリニストが色々な話をしていた中で、今でも覚えている事があります。
それは、あるコンサートでそのバイオリニストとロストロポーピッチが共演した時の話です。
コンサート終了後、そのバイオリニストが、ロストロポービッチを食事に誘ったのですが、ロストロポービッチは「今から、やらなければならない事があるから、ゴメンナサイ。」と言って、ホテルに帰っていったそうです。
次の日、そのバイオリニストがロストロポービッチに、「昨日は、ホテルで何をしていたんですか?」 と訪ねたら、「ボーイングの直角の勉強をしていました。」と、答えが返ってきたそうです。あのロストロポービッチが、コンサートを終わった後にホテルで直角を勉強しなおしてる!!とそのバイオリニストは驚いたそうです。
だから、超一流なんでしょうね。

 さて、今月の話はその直角を正しく動かす為に、非常に良い練習方法です。
この練習は、直角の為だけの練習ですから、今までの腕の重さ≠ネどは一切忘れてください。ただ、ひたすら直角に動かす、フォームのことだけを勉強します。

方法は簡単です。
弓元から弾き始め(Down Bow)、そして10cm位弾いた所で、本来弾かなければならない部分の1〜2cm上空に弓を浮かして、空中をボーイングしてください。
その時の注意点は、空中でフラフラしない事! 空中で、手首の動きを誰にも頼らずに動かす事が出来るかを試して下さい。そして、弓先の10cm位手前になったら、再び弦と接触をして音を出します。
そして、Up Bowの時も同じように弓先で10cm位弾いたら、空中に浮かして元弓の10cm位手前になったら、再び弦と接触して音を出します。
その繰り返しを各弦で勉強してください。見違えるくらいに、直角の動きが正確になってきます。弦に接触して普通にボーイングの練習をするより、10倍は効果があります。お試しください。





Yoshihiro Yamazaki
2002.9.1.