25. たかがスタッカート されどスタッカート
スタッカートと言うと、単に音を短かくすると思って簡単になんとなく弾いているチェリストが多い様に思います。チェロはバイオリンやヴィオラに比べると本体が大きく音の立ち上りが遅くなりがちです。ですから、正しいスタッカートを身につけてシャープなチェリストに変身しましょう。特にアンサンブルをやっているチェリストには絶対身につけて欲しい奏法です。
まず、全て音の出だしは四角い音だと言う事を理解してください。フォルテはもちろん、どんな小さな音でも出だしは四角なのです。ですから、スタッカートは四角く立ち上がった音をスーと短くしてしまえばいいのです。イメージは三角形です。
具体的に説明します。弓に腕の重さに乗せて弦の上に置きます。フォルテだったらたくさん重さを乗せて、ピアノだったら少ししか重さは乗せません。そして、弓の毛で弦を噛んで立ち上がるのです。
〝噛む !〟ボーイングの奏法の表現でこの〝噛む〟という言葉が場違いに聞こえますが、事実弓の毛で弦を噛むという表現がピッタリなのです。噛んでから立ち上がってきますが、絶対に絶対に動き始めてから更に沈もうとしないで下さい。
正しい動きが《 図1 》で、似ているのですが、間違っているのが《 図2 》です。
ここが重要なのです。動き始めてから、更に沈み込もうとすると音の大きさのピークが頭より後に来てしまい、本来あるべき正確なリズムからずれてしまいます。アンサンブルしている他のプレーヤーにとっては、アンサンブルしにくいチェリストになってしまいます。独奏していても、歯切れが悪くホールでは遅れて聞こえてきます。止まっている時が最下点、これがスタッカートの原点です。
なんとなくスタッカートをしている人は《 図3 》が多いのではないでしょうか。空中からきて、弦をさわって空中に跳ね上がって、これはほとんどジェット機のタッチ・アンド・ゴーですね。このスタッカートは特別な時以外はあまり使いません。
スタッカートの動きは中華鍋の中を、なぞる動きではなくて蛙が跳んでいるような動きなのです。スタッカートの話、来月も続きます。
Yoshihiro Yamazaki
2003.6.1