31. 弓先に重さを乗せる

またまた、今月も遅くなりました。スピッカートは説明するととても簡単なのですが、皆様に理解してもらえるのだろうかと心配で、4回もコラムを書きましたが、はたして・・・。

ボーイングをしていて、悩みの中の1つに先弓になると腕の重さが (乗らない) (かけられない) (人差し指が出しゃばってくる)、という悩みは誰もが持っていると思います。弓の先でも腕の重さをかけられるようになる為の、簡単でいい練習方法を書きます。

まず、元弓でしっかり腕の重さをかけます。元弓では腕の重さが乗りやすいですよね。腕の重さがしっかり乗ったのを自分で確認したら、まるでスタッカートのように20cm位弾いてから、空中 (弦の4, 5cm上) に飛び出し、弓先に向かいます。弓の先まできたら着地し、弓の先に腕の重さを乗せ音を出してみます。《 写真 39 》

腕の重さを乗せた弓を弦に置いて音を出し、弓先に移動して再度音を出す動き

その時、腕と弓とで出来るL字を意識します。腕と弓とが一体になったようにイメージして、L字全体で重さをかけます。《 写真 40 》

右腕とチェロの弓でできるLの形

また、親指を爪が向いている方向 (矢印の向き) に押し込むと、腕との連結が強くなり、腕の重さが伝わりやすくなります。《 写真 41 》

チェロの弓を持つ右手親指の力を入れる

最初はそんなに大きな音で弾けなくてもいいから、出来るだけ人差し指の活躍を我慢します。元弓 (〝Down〟) でやったように、〝 Up 〟でも先弓で20cm位弾いて音を立ち上げたら、空中に飛び出して、元弓に帰ってきます。

その繰り返しをするのです。元弓で重さをかけて弾く感覚が抜けないうちに、先弓で同じ感覚で弾こうとする繰り返しが先弓の感覚を上達させます。

その時、1つだけ注意する事があります。ボーイングの基本である〝手の甲の向きを変えない〟です。具体的に言うと、〝先弓で手首を落とさない〟です。先弓になった時、手首がへこんでいたら、絶対に絶対に重さは乗りません。注意してください。《 写真 42 》

弓先でチェロの弓を持つ右手手首が落ちていない様子と落ちてしまっている様子

この練習は自分が考えて、練習の1つとして取り入れていたのですが、フランスから日本に来て教えていたマダムFさんと仕事をした時、マダムFさんもウォーミングアップで同じ事をしていたので、とても感動したのを覚えています。
お試しください。

Yoshihiro Yamazaki
2003.12.6

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