バイオリン ビオラ チェロ 基本の取り扱いガイド 準備編
新生活スタートの人が多い4月。
入学や入社、異動など環境が変わる中、この時期にバイオリンやチェロを始める人も多いと思います。また、去年はコロナ渦でおうち時間が増えたことにより、「楽器を始めた」「再開した」という人も多くいらっしゃいました。
今回から数回に渡り、弦楽器の取り扱いについて連載します。
題して、「バイオリン ビオラ チェロ 基本の取り扱いガイド」
独学でがんばっているあなた、
教えてもらったけれど、覚えきれなかったあなた、
今さら人には聞きづらいあなた・・・
弦楽器を楽しむ方々の手助けになれば幸いです。
肩当ての付け方
バイオリン、ビオラプレイヤーのおよそ80% (筆者感覚) が使っている、「KUN」を参考にします。
- 右手に楽器を持ち、左手で肩当てを持ちます。
- 肩当てを持った時、「 KUN 」の文字が読める向きに握ります。
文字が逆さになっていれば、逆に付けようとしています。
一度逆に付けてみるのも良いでしょう。非常に構えづらいので、すぐに間違いに気が付くはずです。
- 楽器への付け方は色々ありますが、私は手前を楽器に当て、反対側を滑らせながら楽器に取り付けます。
楽器から外れやすい場合は、両側の足 (フォーク) の向きに注目してください。
お互いの足が並行に近い程、脱落しにくくなります。
ほとんどの肩当ては足の間隔を調整できるようになっているので、構えやすい位置 且つ 足が並行に近くなるように、幅や角度を調整してみてください。
《注意!》
足と足の幅が狭くても、無理矢理押し込めば、足の角度が並行になることがあります。
この場合、肩当て本体がたわんだ状態となり、楽器との足の接地面が減るために外れやすくなります。肩当てをぎゅうぎゅうに押し込むと脱落しやすくなる他、側板が肩当ての足によって削れている方もお見掛けしますので、無理な力で押し込まない様に気を付けましょう。
チェロのエンドピン
チェロのエンドピンは通常、キャップを外して構えます。
エンドピンの先は尖っているので、その場所がエンドピンを刺しても良い場所かどうか、必ず確認しましょう。
お家で練習する時や、エンドピンを刺してはいけない場所では、エンドピンレストを使います。
エンドピンを出す長さは、
- ナットが耳のうしろ位になる位置
が、ひとつの目安になります。
構えやすさ、個人の体格、教わる先生のスタイルなどありますので、ご参考までに…。
弓の張り方
- スクリューを回しながら、弓の毛を張ります。
- 弓の棹 (さお) と毛が一番近づいている所が、棹の太さと同じ程に間が空く位が目安。
丸は大体の位置です。弓によってそり具合が違うため、それぞれで確認する必要がありますが、そこまで厳密には考えなくても大丈夫です。
そこから、自分の弾きやすい具合に調整してください。
弾いている時、
Point!
- 毛が棹に当たってしまう様なら、もう少し張った方が良いでしょう。
- 意図せず弓が跳ねてコントロールが難しい様なら、それは張りすぎです。緩めましょう。
楽器や弓から離れる時は、5分ほどの休憩であっても、必ず弓は緩める習慣を身に付けましょう。
弓はとても繊細です。
張った状態で衝撃が加わると、簡単に頭が飛んでしまいます。自分では気を付けていても何が起こるか分かりません。弓を緩めて安全な場所に置きましょう。
頭が飛んで (折れて) しまった弓。
修理できないこともないですが、全く元通りとは行かず、元の性能を完全に取り戻すことはできません。
松やにの塗り方
- 張った状態で、弓の手元から塗っていきます。
弓に松やにが既に乗っかっている場合は、数度滑らせる程度で良いです。
毛替えして初めて松やにを塗る時や、買ったばかりの新しい松やにを使う際は、少しコツがいります。
比較的塗りやすい手元部分の5cmのみに松やにの粉がしっかり付くまで細かく動かして塗り、毛に付いた松やにを伸ばしていくイメージで弓先へ塗り広げていきます。
Point!
- 楽器を弾いてみて、滑る様な感覚があれば足します。
- 積雪のごとく、表板や駒に松やにの粉がたくさん降り積もる様なら塗り過ぎです。
松やには毎回同じ方向で使用するのではなく、回しながら使う事で均等に削れ、長く無駄なく使えます。
チューニング (調弦)
あとは、音を合わせれば弾き始められます!
バイオリン、ビオラ、チェロのチューニングは以下の通りです。
( 画像にカーソルを合わせるかタップすると、ドレミで表示されます。 )
おまけに、コントラバスのチューニングは、高い方から、G (ソ)、D (レ)、A (ラ)、E (ミ) です。バイオリンと逆ですね。
- まずは基準となる「 A (イタリア語:ラ、ドイツ語:アー) の音を合わせます。
チューナーがあれば便利です。
音を鳴らすと一番近い音が表示され、ピッチが高いか低いかを教えてくれます。
調弦の際は、
Point!
- 必ず音を鳴らしながらペグを回す
- ペグは押し込みながら回す
ことがポイントです。
弦は限界以上に巻き上げてしまうと切れます。音を鳴らしながらペグを回すことで、切れるリスクを減らします。
またペグは木と木の摩擦のみで止まっています。押し込みながら回すことでしっかり止まります。
- 基準の「A」の音が合ったら、他の音を合わせていきます。
最初は、全ての弦をチューナーを使って合わせても良いでしょう。
しかしチューナーのほとんどが平均律を基準としているため、人の感覚としては、あまりきれいな和音にはなりません。
(人が心地よいと感じる音律を「純正律」と言いますが、音律の話はとてもややこしいので、ここでは割愛させていただきます。)
可能であれば隣の弦同士を鳴らし、「心地良く聞こえる和音にする」方法で合わせましょう。
(コンサートが始まる前、弦楽器の人たちがやっているアレです。)
- 最後の1本まで合わせたら、もう一度すべての弦の音を確認します。
他の弦を調弦した事により、一度合わせた弦の音が変わっていることがあります (他の弦の張力に引っ張られるため)。また、押し込み具合が甘かったりするとペグが緩み、音が変わっていることもあります。最終チェックをきちんと行うようにしましょう。
アジャスターについて
ペグの反対側、テールピースに付いている金具をアジャスターといいます。
バイオリンとビオラには概ね1番線のみ、チェロには全部の弦に付いていることが多いです。
アジャスターは、
- ペグの補助
- より細かい微調整
の役割を持っています。
バイオリンやビオラで、どうしてもペグの調弦が難しい場合は、全ての弦にアジャスターを取り付けるのもひとつの手です (プロの演奏家でも、細かく微調整をしたいために、アジャスターをすべての弦に付けている方もいるそうです)。
しかし、アジャスターをたくさんつけることによって生じるデメリットもあります。ここでは割愛しますが、今後コラムで取り上げられたらと思っています。
基本は、①ペグで調弦し、②アジャスターで微調整、する調弦を身に付けましょう。
いかがでしたでしょうか?
慣れてくれば、楽器を弾き始める前のルーティーンとして自然と手が動くようになります。慣れている方でも、ご自身の方法と比べてみて、見直しの機会となりましたら幸いです。
次回は「片付け お手入れ編」をお送りします。